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幸せな人生を送るために書くブログ集

【もう一度みたい映画「マドモアゼル」・聖女の中に棲む魔性】


最近、これはという映画を見ていませんが、

 

前回、森の記憶について書いたあと、ふと思い出した映画があります。

 

ジャンヌ・モロー主演の「マドモアゼル」

 

 

これを観たのはテレビだったか、グサリとくるものがあった。

 

やはり人間というものは、内部に何を抱えているか分からない存在、

傍目には理性的だと見える人が異常な行動に出る場合がある。

そんなことを考えさせられる映画だった。

 

 

「主演のジャンヌ・モローは、マドモアゼルと呼ばれ村人の尊敬を一心に集める女教師。

 

だがそれは表向きのこと、神秘な美しさを持つ彼女には、誰にも知られない秘密があった」

 

 

スタッフ

監督:トニー・リチャードソン長距離ランナーの孤独トム・ジョーンズの華麗な冒険)

 

脚本:マルグリット・デュラス(作家・映画監督 愛人❝ラマン❞)

 

原作:ジャン・ジュネ(背徳の作家 今回は映画のために初めて書いたストーリー)

 

キャスト

マドモアゼル:ジャンヌ・モロー(フランス・ヌーベルバーグの代表的女優)

 

マヌー:エットレ・マン二(イタリアの活劇スター・本格的なドラマの主演は初)

 

ブルーノ(マヌーの息子):キース・スキナー

 

1966年制作・100分・イギリス・フランス合作

 

*音楽は一切使われていない モノクロ映画

 

 

ストーリー

舞台はフランス中央部の小さな村。

 

そこにマドモアゼル(ジャンヌ・モロー)と呼ばれる女教師がいた。

彼女はオールドミスだったが、村人の厚い信頼を得ていた。

 

ある日、その村にイタリア人のマヌー(エットレ・マン二)が、息子のブルーノと、

友人のアントーニオを連れて出稼ぎに来る。

マヌーの野性的な魅力が村の女たちの目を惹いた。

 

マヌーが来てから村では水門が破られたり、原因不明の火事が起きたり、

村人たちはよそ者のマヌーが犯人ではないかと決めつけていた。

だが、村で災難が起こるたびに駆け付け半裸でかいがいしく働くマヌー。

 

そんな彼をマドモアゼルはいつも遠くから見つめていた。

 

村人から厚い敬意を寄せられるマドモアゼル、だが彼女こそすべての災難の犯人

だとは誰も知らない。

彼女が夜に厚化粧を施し、凝ったデザインのマッチを手に密かに農家へ放火しに行くことを。

 

そんな彼女の正体を見破ったのは、マヌーの息子ブルーノだった。

だが、この少年は誰にもそのことを語らなかった。

彼はマドモアゼルに憧れ、恋していたのだ。

 

マドモアゼルは、マヌーが木こりとして働く森へよく散歩に行った。

道で彼に会うこともしばしばだった。

二人の視線は沈黙のまま絡み合う。

木洩れ日に輝くマヌーの逞しい肉体、抑えようとしても抑えきれない欲望が

マドモアゼルの中に膨れ上がってゆく。

 

彼女が毒薬を入れた池の水を飲んで、家畜が全滅した日、

村人たちの怒りは頂点に達した。

 

今こそ犯人と思しきマヌーを捕えようというのだ。

 

そのころ、マドモアゼルは森でマヌーと逢っていた。

 

 

これまで聖女のごとく振舞っていた彼女は、今や野生の女と化しマヌーの肉体を求め

夜が白むのも忘れていた。

 

マドモアゼル』 魔性のジャンヌ・モロー | シネマの万華鏡

 

朝になって、引き裂かれて泥に汚れた衣服のままで村に帰ってきた

マドモアゼルに驚く村人たち。

彼らの質問に、彼女はマヌーに暴行されたと語った。

 

そしてマヌーは村人のリンチで嬲り殺された。

 

 

悪夢のような夏がすぎる頃、マドモアゼルは惜しまれながら村を去った。

 

だが、彼女の正体を知っているブルーノは、彼女の後姿にツバキを吐きかけるのだった。

 

 

この映画を見終わったあと、しばし呆然としていた。

 

言葉が出てこない・・・。

 

逞しいマヌーの肉体を欲望し、森の中で想いを果たしたあと

村人に男の命を売る。

 

自分を守るためとはいえ大した悪女・・・。

 

そしてまた、それを受けてマヌーを嬲り殺す村人たちも。

 

気のいいマヌーは、彼等の生け贄になった。

すべてを知る息子、ブルーノを一人残して。

 

 

美しい森での二人の幻想的な抱擁シーンと、最後の凄惨な結末の対比が物語に凄みをきかせる。

 

ジャンヌ・モローの醸しだす空気感がなんともいえない。

そしてマヌーの野性美も見どころだった。

 

舞台は一見穏やかで自然豊かな村、そして神々しいほどに美しい森。

だが、そこに住む人間は必ずしも満たされてはいない。

フラストレーションが溜まり、心は鬱屈し時に悪意さえ芽生える。

 

「マドモアゼル」はどこか神秘的で残酷な映画だった。

 

これからも綺麗事ではなく、人間の根源に迫る映画が見たい。